糖尿病の運動療法について

多くの場合、病気にかかるとまず「安静にしてください」と医師から指示されますが、糖尿病の場合、安静は症状を悪化させる要因のひとつとなります。糖尿病治療の原則は、一に食事、二に運動です。正しい食事と適度な運動は、自動車の両輪のようなものです。
  
運動をするとこんな効果がありますよ。
・血糖値が下がる。
・インスリン抵抗性が改善される。
・血管の老化を防ぐ。
・肥満の防止、解消。
・筋力、体力増進。
・ストレス解消。

すなわち、運動はインスリンの効果を強め、インスリンを分泌する膵臓の負担を軽くし、長年正常に近い代謝状態を維持することが可能となります。

しかし、残念なことですが、
運動にはリスクもともないます

運動は、やり方を間違えたり、病状によっては効果がでないどころか、症状を悪化させる恐れがあります。
そこで運動を行う前にはメディカルチェックを受けましょう。


糖尿病の状態(血糖コントロールと運動)
表1 

運動開始前の血糖値
100mg/dl未満 100〜250mg/dl 251 mg/dl以上
食事療法だけの人 尿ケトン体(−) ○
尿ケトン体(+) ×
血糖を下げる薬を飲んでいる人 尿ケトン体(−) ○
尿ケトン体(+) ×
インスリン注射をしている人 尿ケトン体(−) ○
尿ケトン体(+) □

○:運動してもよいでしょう
△:捕食をしてから運動しましょう
□:インスリンを注射して、尿ケトン体(−)になったら運動しましょう

合併症と運動
表2 

網膜症 単純性 前増殖性 増殖性
腎症 微量アルブミン尿 間欠的たんぱく尿 持続たんぱく尿
神経障害 症状なし 症状が軽い運動で不変 症状が重い、運動で増悪
運動療法 適応 不適応
実施 注意して実施 運動を控えたほうがよい

糖尿病以外の病気の有無
    循環器系疾患(心筋梗塞、狭心症など)があるとき。
    高血圧症(180mmHg/110 mmHg以上)のとき。
    感染症などで体調が悪いとき。
    ⇒ 以上のときは運動を避けて下さい。


では、実際の運動について説明しましょう。
運動の効果を引き出し持続させるには運動の種類、強度、継続時間、頻度、時間帯が問題となってきます。

運動の種類は?
    
有酸素運動と無酸素運動の二種類を組み合わせて行うのが理想的です

有酸素運動 無酸素運動
心肺機能が活発になりエネルギー消費が増え、肥満の防止に役立ちます。 血圧等に注意して行えば筋肉の量が増し基礎代謝をあげることができます。
歩行・ランニング・サイクリング・水泳 バーベル挙げ・ダンベル挙げ・握力
 体力がつく 筋力が強まる

            この二種類の運動を組み合わせて、 規則正しく、そして長く続けることが大切です。

もう1つ大切な運動があります。それは
柔軟体操(ストレッチング)です。運動の前後に必ず行って下さい。

  準備体操(ウォーミングアップ) → 事故防止 
  *筋温、体温が上昇して血液循環が良くなる。
  整理体操(クーリングダウン) → 疲労回復
  *乳酸などの代謝産物を速やかに除去するとともに、筋の収縮を防ぐ。

運動の強さは?
日常生活レベル以上の強度が必要です。体力に伴い、トレーニング負荷は徐々に増加させていきましょう。
その時必ず心拍数(脈拍数)を参考にして下さい。

運動強度と脈拍数

RPE点数 強度の割合%max 強度の感じ方 一分間あたりの脈拍数 その他の感覚
60代   50代   40代   30代   20代
19 100 最高にきつい 155    165    175   185    190 からだ全体が苦しい
18
17 90 非常にきつい 145    155    165   170    175 無理,100%と差がないと感じる,
若干言葉が出る,息がつまる
16
15 80 きつい 135    145    150   160    165 続かない,やめたい,
喉が渇く,頑張るのみ
14
13 70 ややきつい 125    135    140   145    150 どこまで続くか不安,
緊張,汗びっしょり
12
11 60 やや楽である 120    125    130   135    135 いつまでも続く,充実感,
汗が出る
10
50 楽である 110    110    115   120    125 汗が出るか出ないか,
フォームが気になる
40 非常に楽である 100    100    105   110    110 楽しく気持ちがよいが物足りない
30 最高に楽である 90     90     90    90     90 動いたほうが楽,
まるで物足りない
20 80     80     75    75     75


運動交換表

運動の強さ 1単位あたりの時間 運動
(エネルギー消費量、Kcal)
T.非常に軽い 30分間位続けて1単位 散歩(0.0464)
乗物(電車,バス立位)(0.0375)
炊事(0.0481)
家事(洗濯,掃除)(0.0471〜0.0499)
一般事務(0.0304)
買物(0.0481)
草むしり(0.0552)
U.軽い 20分間位続けて1単位 歩行(70m/分)(0.0623)
入浴(0.0606)
段階(降る)(0.0658)
雑巾がけ(0.0676)
ラジオ体操(0.0552〜0.1083)
自転車(平地)(0.0658)
V.中等度 10分間位続けて1単位 ジョギング(軽い)(0.1384)
階段(のぼる)(0.1349)
自転車(坂道)(0.1472)
歩くスキー(0.0782〜0.1348)
スケート(0.1437)
バレーボール(0.1437)
登山(0.1048〜0.1508)
W.強い 5分間位続けて1単位 マラソン(0.2959)
なわ飛び(0.2667)
バスケットボ-ル(0.2588)
水泳(平泳)(0.1968)
ラグビー(フォワード)(0.2234)
剣道(0.2125)

(注)1単位は80Kcal相当です。             (佐藤、1986)

継続時間は?
15分以上は続けましょう。できれば30分〜40分続けていただくとよいかもしれ
ません。また同じ運動は60分以内に止めておいて下さい。

    □脂肪
    ◆炭水化物

時間帯は?
食後1時間くらいがよいでしょう。糖尿病患者さんの血糖値は食後1時間1時間半でピークを迎えますので、血糖が高くなる少し前、食後1時間くらいに運動を行うと高くなる血糖を抑えることができます。

    □運動していないとき
    ◆運動しているとき

頻度は?
週に3回から5回がよいといわれていますが、毎日行うことを心がけましょう
            
運動する際、以下のことに注意して下さい。
準備体操、整理体操は十分に行なう。
軽い運動から強い運動へと徐々に移行する。
無理せず、マイペースでニコニコと。
運動しやすい服装、靴で行なう。
食事療法は必ず守ろう。
インスリンを使用している人は、低血糖に注意してください。(運動で使う部位に注射をすると、吸収が早まることがありますので注意してください。)
     
補食の予備知識
<必要に応じて運動前・中・後に補食をとりましょう>

前:激しい運動や長い運動の場合は15〜30分前に。
中:運動が長時間に及ぶ場合は吸収の早いものを。(ジュース、あめなど)
後:30分以内と1〜2時間後に吸収の遅いものを。(ヨーグルト、ビスケットなど)