ペットの持ち込みと自然破壊


ペットの過剰な持込みが生態系を乱す

磐梯朝日国立公園特別保護地区の五色沼で野生動物が次々姿消す
 福島県自然保護協会は五色沼自然探勝路で動物の痕跡調査を1987年から継続して行い、ふん、食べ跡、足跡などの痕跡数を調べている。1999年まではテン、イタチ、タヌキなどのふんの痕跡がよく見つかっていたが、その後痕跡は減り始めた。
 2000年ごろからペットの犬を連れて入山する人が年々増え、逆に野生動物の痕跡は減り続けた。テンはなわばりを主張するために目立つ場所にふんをするが、犬が多数通った道沿いにはほとんどふんをしなくなった。
 探勝路を訪れる観光客の数はここ20年間ほとんど変わっていないことから、人間ではなく、犬を警戒して野生動物が寄り付かなくなった可能性が高い。つまり、なわばりを主張する犬の尿(マーキング)やふんの臭いを警戒して寄り付かなくなったと思われる。
 五色沼にはペット持込みの自粛を呼び掛ける案内板が数ヶ所に設置されているが、目立たない場所にあるため気づく人が少ない。効果的な案内板の設置や、野生動物に対するペットの影響を周知するなどの対策が必要である。
 なお、貴重な自然地や山岳への過剰なペット持込みは全国的にも問題になっている。県内では安達太良山、磐梯山、裏磐梯デコ平、雄国沼などで同じような問題が起きている。

File0915.jpg


ペット犬の持込みによる野生動物への影響を調べた調査

調査目的 ; 磐梯朝日国立公園の五色沼探勝路で、野生動物の痕跡が年々減少していることから、近年流行して
       いるペット犬の持込みとの因果関係を調べるために行った。

調査日 ; 毎年無作為に日時と日数を設定した。

調査時間日中(主に午前中)の2時間

調査場所 ; 磐梯朝日国立公園裏磐梯地区の五色沼自然探勝路(約3,5km)

所在地 ; 福島県耶麻郡北塩原村大字桧原

調査団体 ; 福島県自然保護協会(調査責任者;横田清美)

調査方法 ; 探勝路を歩き、見える範囲で観察された動物の痕跡(ふん場の数)を記録した。

備考 ; 犬の持込み数および野生動物のふん場の数は調査日数で割った平均値(小数点第2位を四捨五入)である。
     犬の持込み数は探勝路内に持ち込まれた犬をカウントした。

調査結果                                     (※ふん場=ふんをした場所のこと)

調査した年 調査日数 カウントした犬の数の合計 犬の持込数(1日2時間の平均) テンのふん場の数(1日の平均) イタチのふん場の数(1日の平均) タヌキのふん場の数(1日の平均)
1987年 33日 データ不足
1988年 42日 データ不足
1989年 21日 データ不足
1990年  5日 データ不足 データ不足 データ不足
1991年  1日 データ不足 データ不足 データ不足
1992年  4日 0.3 データ不足 データ不足 データ不足
1993年  9日
1994年 26日 7.4 0.6 1.7
1995年 29日 7.3 0.8
1996年  8日 5.7 0.3
1997年  1日
1998年  9日 1 0.1 6.6
1999年  7日 0.4 6.2
2000年 11日 0.5 3.7
2001年 10日 15 1.5
2002年 10日 30 0.6
2003年 15日 63 4.2
2004年 16日 105 6.6 0.1
2005年 16日 70 4.4
2006年 13日 66 5.1 0.2
2007年 17日 92 5.4 0.1

考察

・ペット犬の持込み数が増えるにしたがってテンのふん場の数が明らかに減少した。

・探勝路において犬のマーキング行動(縄張り主張で行う尿)や糞の放置が目立った。

・ペット持込みの自粛を呼び掛ける案内板が数ヶ所に設置されているが、目立たないため設置効果はほとんどない。

・五色沼自然探勝路の観光客の入り込み数は20年前とあまり変わっていない。裏磐梯観光協会の調べによれば、むしろ
 減少傾向にあるという。

・野生動物(特にテン)が犬のマーキングや糞に対して忌避行動をとり、探勝路に寄り付かなくなった可能性が高いと考え
 られる。

※本文の無断使用を禁じます。


フォトライター・日野東さんのホームページ「ネイチャーログ」に犬連れ登山に関する記事が載っています。
「犬連れ登山を考える」


この調査報告に対するご意見、ご質問等がありましたら、右下のメールアドレスにお便りください。


yokota.nature@eagle.ocn.ne.jp

福島県自然保護協会のトップページへ