| パラレルワールド |
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ドラえもんとのび太は、地球そっくりな星を訪れたことが何度かある。コミックス17巻『あべこべ惑星』では、左右あべこべな日本に、皆に天才と呼ばれスカートをはいたのび太がいた。コミックス21巻『行け!ノビタマン』に登場した星は、引力こそ地球より弱いものの、地球人そっくりの人間が住んでいたのである。 コミックス32巻『のび太も天才になれる?』では、教育以外は地球と同じ星に、コミックス36巻『めいわくガリバー』では、地球そっくりだが全てミニチュアの小人が住む星に辿り着いている。これらのことから、宇宙には地球にそっくりな星が点在していることになるわけだが、腑に落ちない点もある。 ドラえもんがそういった星々の存在を全く知らなかったことだ。天球儀や宇宙救命ボートがある未来の世界なら既に誰かが発見していても不思議ではないし、どこでもドアで「宇宙の果てのハテノ星雲のはじっこの星」まで行けるのであれば、それらの星に行くことは困難ではなく、往来があってもおかしくはないはずである。 博識のドラえもんですらその存在を知らず、のび太がそれらの星々でほんやくコンニャクを使用している様子もない(*1)。果たして、地球にそっくりな星が宇宙のどこにあるのだろうか。実のところ、こうした惑星はドラえもんとのび太が住む宇宙とは別の宇宙に存在する可能性が考えられるのである。 (*1・見た目や大きさは地球にそっくりだが、文明レベルは地球の石器時代という星で、ほんやくコンニャクを使用している。コミックス44巻『宝星』) ◆インフレーション理論 インフレーション理論は、東京大学大学院教授の佐藤勝彦氏とアメリカの物理学者アラン・グースがそれぞれに提唱した理論である。 インフレーションとは、宇宙初期の急激な加速膨張のことをいう。インフレーションの原動力となったのは真空のエネルギーで、それを解放したのは相転移だった。宇宙のあちこちで同時多発的に発生した相転移によって、エネルギーの低い領域が次々とできる。やがて、この領域が広がって全体を覆うようになるのだが、高エネルギーのまま残される領域がある。光速度で膨張するエネルギーの低い領域に押し縮められるエネルギーの高い領域は、インフレーションを起こして別の宇宙を生み出す。 生み出された別の宇宙は子宇宙(チャイルド・ユニバース)と呼ばれ、元の宇宙は親宇宙(マザー・ユニバース)と呼ばれる。そして、子宇宙でも親宇宙と同じプロセスが繰り返されることにより、子宇宙から孫宇宙が、孫宇宙から曾孫宇宙が、といった具合に、次から次へと際限なく宇宙が生まれていく。 こうして誕生した宇宙の中には、我々の宇宙と類似した宇宙に成長しているものや全く違った物理法則に支配されている宇宙があるかもしれず、様々な宇宙が存在していると考えられるのだ(*2)。ドラえもんの宇宙救命ボートが別の宇宙に行くことが可能だとすれば、『行け!ノビタマン』などに登場する惑星も、ありえない話ではないだろう。 (*2・元の宇宙とそこから派生した宇宙はワームホールで繋がっているが、互いは事象の地平で隔てられており、因果関係が完全に遮断されているため、観測的に証明できない) ◆多世界解釈 パラレルワールドについて、オーストリアの物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが量子力学の奇妙さを表わすために試みた思考実験(ミクロな領域に限られていた確率解釈という不確定性が、マクロな現象にまで拡大されることを示す)から考えてみよう。 まず周囲から遮断された鋼鉄の箱の中に1匹の猫を入れ、次のような仕掛けをしておく。箱の中には微量の放射性物質が入っている容器、その放射性物質を計測するガイガーカウンター、それと連動してリレーによって動くハンマー、その先に青酸ガス入りの瓶。放射性物質は、1時間のうちで1個の原子が崩壊するかしないか、という程度の微量にしておく。 もし、放射性物質が崩壊すると、ガイガーカウンターがこれを検出、連動してハンマーが振り下ろされて青酸ガスの瓶が割れ、猫が死ぬようになっている。実験開始から1時間放置して箱を開けたとき、猫が生きているか死んでいるかを確かめる。 解釈 コペンハーゲン解釈(こちらが量子力学解釈の主流)によれば、状況は次のようになる。箱が密封されている限り、そこに存在するのは2つの可能な状態の重ね合わせである。つまり、猫は生きてもいるし死んでもいるという、半死半生の状態に置かれることになるのだ。そして、観測(箱を開けて中を確認)されたとき初めて、どちらか1つの状態に決まるとされている。 一方、1957年にプリンストン大学の大学院生ヒュー・エヴェレットが提唱した多世界解釈は、観測の対象のみならず観測者を含む全部を量子力学系として扱い、観測によって可能な全ての状態が現実のものとなると考える。 猫の例でいえば、猫が生きている状態と死んでいる状態の両方が現実になる。すなわち、猫が生きていて観測者も生きている猫を観測する世界と、猫が死んでいて観測者も死んでいる猫を観測する世界へと分岐するのだ。それぞれの観測者は、自分の世界が唯一の現実だと認識している。もう一方の世界は、物理的に切り離された別の現実であるため、互いの世界を行き来することは不可能である。 なお、オックスフォード大学の理論物理学者デイヴィッド・ドイチェは、量子コンピュータの実用化が、多世界解釈の証明につながるとの見解を示している。 |
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